デザイン、それはこだわり。空間を演出するライティングデザイナーが求める「光の美しさ」という表現とは、
その裏側を支える様々な装置や器具の納まり等、細部にわたるこだわりの集大成と言えるでしょう。誰にでも認識しやすい大きなこだわりや、
なかなか気付かれることのない小さな小さなこだわり。そんな数々のこだわりの数々をLIGHTDESIGNのマニアック娘「萩原シャッキー」が
「ディテール」という視点で解説していきます。



こんにちは、萩原シャッキーです。2回目となる今回はさらなる「こだわりディテール」を探すべくオフィスを飛び出し外に繰り出す事にしました。さてここは夕方の高円寺。この街には皆さんご存知の有名建築家による施設があります。JR中央線高円寺駅からほど近く、高架線路に沿って歩いて行くと異彩を放ったチョコレート色の建物が姿を現します。壁に無数に空いた丸い穴が特徴的な建築、それが「座・高円寺※1」です。照明デザインは皆さんご存知(!)の私たちLIGHTDESIGNです。





床に落ちる丸い光

入口が見えてきました、さっそく中へ入りましょう。とその前に…入口の床に何かあります!
「この丸い光は何だろう?」
よく見ると入口のみならずエントランスロビーの床にまで大小の丸い光が広がっています。このエッジの効き方はただものではない(・・・気がします)!

「この丸模様の光はどういう意味?どうやってくっきりとしたエッジを作っているの??」

見る人によっていろいろな解釈があるとは思いますが、作り手は何を意図しているのか、本当の所はどうなの?という事で調査開始!真相をLIGHTDESIGNの担当者にさっそく聞いてみたいと思います。

照明について

事務所内の担当者(写真右)への聞き込み調査の結果、丸い光のコンセプトは「2つ」ある事が判明しました。

その1. この建築の開口に用いられている丸い穴が光にも影響して木洩れ日のように繋がっていくイメージにしたかった。

木洩れ日とは(驚)!なるほど、確かに床に落ちる丸い光は、壁にあいた無数の丸い窓から差し込んだ光が床に映し出されているように感じます。大きさの異なる丸い光が重なり合う様子は、枝葉の間から差し込んだ日光が作り出す複雑な影を彷彿とさせます。実に演劇的!!

その2.「座・高円寺」が演劇主体の劇場という事から、劇場のステージにスポットライトが当たっているような効果を出したかった


舞台上ではよく見かけるくっきりとしたスポットライトの光を建築照明に取り入れていたんですね。いわば舞台という非日常の光を劇場の入口にも持ってきたのでしょうか。実はここに来た時から、ワクワクと高揚していたのはこの光の効果だったのかも!

丸い光のつくり方

さて次に進みましょう。通常ダウンライトやスポットライトから出た光は床に丸い光を映しますが、それはぼんやりとした輪郭がほとんどです。こんなにくっきりとした存在感のある光の「丸」は建築空間であまり見かけません。このくっきりとした丸い光はどのように作られたのでしょうか?

担当者:「ズバリ!プロジェクタースポットを使っているのだ」

なるほど!プロジェクタースポットとは像を結ぶ光を作りだす装置で、焦点の合わせ方次第で、エッジをくっきりとさせる事も、ぼんやりさせる事も出来る照明器具。特徴的なくっきりとした丸い光はこの器具によって作られていたのです。天井に見えるダウンライトはプロジェクタースポットだったわけですねぇ!(写真参照)




こだわりディテールの核心にせまる!

しかしまだまだ疑問は残ります。床面と天井を見比べてみると・・・。

「あれっ!?なんだか違和感感じるなぁ。何でだろう・・・。床にはたくさんの丸い光が落ちているのに天井には数えるほどしか開口がない・・・そうか分かった!天井のダウンライトの数に比べて圧倒的に床の丸い光の数が多いんだ!!」

普通なら床の丸い光と同じ数のダウンライトが天井にもあるはずです。これはどうやらプロジェクタースポットによる輪郭のはっきりした光だけじゃないぞ。何やら匂いますね〜。この不思議な光にこそ重要なディテールが隠れていそうです!いったいどういう仕掛けになっているのでしょうか?



ゴボの登場

実は「ゴボ※2」に秘密があったのです。ゴボとは、プロジェクタースポットに装着して様々な模様や文字を投影する為の「板」の事。つまり床に現れた丸い光はゴボで作られた模様だったのです。ちなみに1つの光源からゴボを通して8つの光が出ています。目を凝らして見てみると8つの光のパターンが見えてくるかもしれません。



床面の光を効果的に見せるために、あえて天井の開口を少なくする。そのために必要だったのが、プロジェクタースポットとゴボだったという訳です。まさに「能ある鷹は爪を隠す」!これぞ光が主演となる劇場空間の為に考えこまれたこだわりポイントだったのです。 主人公は光で器具は脇役。「仕掛けを見せない」建築照明デザインの極意を見せつけられたような気がしました〜!

1つの穴から沢山の丸い光が出て来るプロジェクタースポット、なんだかシャボン玉みたいでフワフワとした空間だなぁ、なんて楽しい気持ちで建物から出たらすっかり夜。今回のこだわりディテールをしっかりメモして、高円寺を後にしたのでした。(気付けば今回エントランスロビーしか見ていなかった・・・)


おまけ:いくつあるでしょう?

突然ですが、ここでクイズです!今回ご紹介した「座・高円寺」のエントランス部分の床には丸い光がいくつあるでしょうか?これを知っているあなたはかなりのマニアです!(下の行をマウスで選択すると答えが分かります!)。

正解は152個。(入口とエントランスロビーのみならず、実は搬入口にも丸い光が隠れています。これを見つけるのは難しいかもしれません)
合計19台の器具によって床の丸模様が構成されています。



001 LIGHTDESIGN

002 座・高円寺

003 アーバンドックパークシティ豊洲




座・高円寺

調査日:2010/02/01
所在地:東京都杉並区高円寺

Datail Point:
プロジェクタースポット、ゴボ

照明デザイン
LIGHTDESIGN INC.


※1 「座・高円寺」とは:
旧高円寺会館の老朽化に伴い新しく立て替えられた劇場。建築家伊東豊雄氏の設計により2009年にオープン。役割の異なる「小劇場」、「区民ホール」、「阿波おどりホール」という3つのホールを持つ。建物内、エントランスから見る景色には無数の丸い穴。それらは窓であったり階段の手摺り壁に埋め込まれた照明器具。そして床に落ちる光といった具合に、すべて「丸」が建築のモチーフとなっているよう。大小様々な大きさの丸に包まれたなんとも不思議な空間。



LINK: 座・高円寺

※2 [番外編] 工場潜入リポート:
今回登場したプロジェクタースポットの生まれ故郷、日本応用光学 茨城県岩間工場へ行って参りました。プロジェクタースポットとゴボについての気になるあれこれを調査してきました!



LINK: 工場潜入レポート








萩原シャッキー = 本名/萩原克奈恵
ライティング・デザイナー
LIGHTDESIGN INC. 所属

千葉生まれ、千葉育ち。千葉工業大学・大学院工学研究科(建築都市環境学)修士課程修了。小学生、中学生、高校生の清き日々を仏教系学園で過ごし、仏教の思想・文化から大いなる影響を受けた。どうして照明デザインの世界にはいったのか? 建築空間と仏教・・・そんなことを考えていたら照明に至ったと真面目に語ることもある。2005年にLIGHTDESIGN入社。シャッキーは、恐れ多くも釈迦(しゃか)から由来したコードネームで、社内でいつの頃からか呼ばれるようになった。

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