vol.5 いろ【色】

「広辞苑第六版 209頁から抜粋」
1. 視覚のうち、光波のスペクトル組成の差異によって区別される感覚。
光の波長だけでは定まらず、一般的に色相、再度および明度の三要素によって規定される。色彩。
2. 色彩に関係ある次のような物
 1階級で定まった染色
 2禁色
 3喪服のにびいろ
 4婚礼や壮麗の時、上に着る白衣
 5顔色
 6おしろい、化粧
 7醤油や紅の異称
3. 容姿などが美しいこと
4. ものの趣
5. 愛情。愛情の対象たる人
6. 種類。品目。
7. 邦楽で、主旋律でない修飾的な説。また言葉の部分と節の部分との中間的な扱いをする 唱え方


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今回のテーマは「いろ」。
「いろ」という言葉一つで表される意味は果てしなし広く、なにか形が有るものでも、無いものでも心に訴えかけてくるような類のもの、例えば気配や趣や音楽に対してこの言葉を使ってきたであろう雰囲気がございます。
どの意味をとっても大変興味深いのでございますが、ここは、照明デザインのフィールド、やはりいの一番思い浮かぶ、色彩としての「色」を追いかけてみることといたしましょう。


 

■ワードサーフィンマップ

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解説

■壱ノ波

「いろ」に関する言葉はここに書ききれないほど、〜色(なになにいろ)、という言葉だけでも506語もあったのでございました。隅から隅までくまなく探るのは、国語学者の方にお任せするとして、私のワードサーフィンでは、初めて出会う聞きなれない言葉、あ!と心掴まれた言葉を選んでスィーッと紹介してまいります。

とりだした言葉をずらーりと並べて眺めていましたところ、色の表し方は、7つのグループに分けられるのではという仮設を立ててみたのでございます。
7つの分類は、「文化」や「人の感情」、「自然に現象」など、もともと「いろ」の意味として記されていた所に立ち返るような区分けでございました。「色彩」に限ったつもりが「いろ」の意味全体に逆もどりして触れることになり、言葉の世界の不可思議さに改めて感銘を受けております。
それぞれの言葉の意味と、その7つの分類を記して1つの表といたしましたので、ご覧くださいませ。

■弐ノ波

「色」の中から、単純にものの表面の色を表すだけではなく、もう少し含みをもった言葉がみつかってまいりました。そのうちいくつかの由来を探り、さらに理解を深めてまいりましょう。(引用と抜粋 「色の名前事典」 福田邦夫著 主婦の友社)

こういろ【香色】
丁子などの高木を用いて染めた色で、平安貴族にも好まれた。
芳香が匂うような、いかにも風雅な色名

なまかべいろ【生壁色】
「生壁」は水を混ぜて練り上げた壁土がまだ乾いてない状態をいいい、湿って黒ずんだ緑みの黄褐色をしている。すっかり乾いてしまうと白茶けた色に変わる。
この言葉は左官職人の用語ではなくて、染色の色名として使われる。

のぞきいろ【覗き色】
藍瓶の中をちょっとのぞいただけの色、という意味のユーモラスな命名。
甕瓶を覗いただけでは薄い色にしか染まらない。

 

丁子の芳しい香りや、生壁の湿気、ちらっと覗く動きまでも含めて、色を表現する日本語の感性を、恥ずかしながら始めて知ることとなりました。

■参ノ波 “闇に隠す”こと

たどり着いたなかで今回一番気になったのが「からすの濡れ羽色」という言葉。
ツヤのある美しい黒髪のことを表して、落語等では美人を表す決まり文句としても使われるのだそうでございます。

ところで「からす」は辞書ではこんな風に説明されております。
「日本では 主としてはハシブトガラスとハシボソガラスの2種。雌雄同様、黒くて光沢がある。多くは人家のあるところに住み、雑食性。…古来、熊野の神の使いとも知られ、またその泣き声は不吉な物とされる。」
街でみかけるからす達の姿だけ想像していると、ほめ言葉とは感じづらいものですが、古来には神の使いとも考えられていたならば、語源にもうなづけましょう。

「からすの濡羽」という言葉を耳にすると、私の脳裏には映画のワンシーンのように、からすが水浴びをするこんな情景が浮かんでまいります。

▼川べりにて
▼「おや、からすは水浴びをしているのかな」
▼びしゃびしゃと水に入るからす
▼濡れた羽が黒々として、照り付ける日差しを反射している
▼「つやつやしっとりした黒羽の色が、まるで美しい女性の髪のようだ…」と思いにふける男がひとり

黒い髪といわれてしまうよりも、もっと艶やかで、健やかな黒髪の美しさが引き立ち、その髪をもつ女性の魅力もぐっと深まります。
時間の経過や、質感や、文化を含めて「色」とする。写真や映画のない時代から、「色」を如何に表現するかで互いに趣を共有できる、そんな感性がつむがれてきていたのですね。
では今回はこのあたりで波乗りを終えて失礼致したく存じます。また次回より深き言葉の世界の旅をご一緒させていただきませう…。かしこ











 

 

 






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