投稿日:2012.08.20
夜空を彩る灯り
皆様、お盆はいかがお過ごしでしたか? 先週、京都では五山送り火、長崎では精霊流しなど、日本の夏の風物詩ともいえる光の行事が各地で行われました。地域によっては花火大会をはじめ、提灯や灯篭をはじめとしたライトアップやサマーイルミネーションなど、街を光で彩る様々なイベントが行われたようです。光のイベントと言えば、三原色のLEDが登場したことで、気軽にきれいな光の色を演出することができるようになりました。
しかし、光というものは不思議なもので、色を使った演出を派手にやればやるほど、その演出はなぜか薄っぺらなものに見えてくるから不思議です。何だか光の神様がいらっしゃって、「もう少し光の本質に迫るような仕事をしなさいね!」といわれているようにも感じます。たしかに派手な仕掛けを使わない自然な光の現象のほうが、はるかに人の心を捉えたりするものなのです。
続きを読む
投稿日:2012.08.02
“電球ソムリエ”育成のために
このブログの名前に「ソムリエ」と付けた理由は、私がワインというお酒の奥深さに魅せられているからなのですが、照明の世界もまたワイン同様に奥深いものです。この2つには何やら共通する世界観があるように感じています。
最近はこの共通性のある異文化からも照明の世界観をもう少し深めたいと思い、2年ほど前からワインの学校に通い続けています。すると、ワインスクールで学んだワインの評価方法を、照明の世界にも応用ができないか?と考えるようになりました。たとえば、「照明による空間の明るさ感や色の見え方、雰囲気」という、これまであいまいにしか表せなかった感想を、体系的に表現するワインのテイスティングコメントのように書いてみよう!というアイディアを持ったのでした。
そんな考えから、昨年よりスタートさせたのが、電球ソムリエワークショップ「アカデミー・デュ・ランプール」です。まず初級編としてスタートした講座は全4回で、光の基礎知識から始まり、たくさんの種類の電球の構造や発光原理、そして後にはワインのように電球の光をテイスティングすることで、その違いや個性を感じていただくというプログラムです。
この講座は、幸いにも友人の計らいでスポンサーとなる企業の協力も得て開くことができたのですが、最終回には「初級電球ソムリエ認定試験」も行い、合格した方には電球ソムリエに認定するとともにバッジを差し上げる・・・という、ワインのソムリエさながらの楽しい企画になったのでした。
今回は、この講座の中でも特に好評だった「光のブラインドテイスティング」をご紹介いたしましょう。
続きを読む
投稿日:2012.07.19
デザイナーの空間感覚に学ぶ
こんにちは、東海林弘靖です。いよいよ暑くなってまいりました。そして、まもなく夏休みの季節となりました。みなさまの中には、すでに夏休みの旅の計画を立ててワクワクしている方などもいらっしゃることかと思います。そんな方々にとって7月の後半は、なかなかアクティブで楽しい毎日かもしれませんね。
私はというと、4月にヨーロッパの長旅を致しました故に今は仕事に邁進しております。
前倒しにした夏休み(?)で私が訪れたのは、フランスのパリに世界的に有名なファッションデザイナー、マルタン・マルジェラがデザインした美しいホテル「La Maison de Champs Elysees(ラ メゾン シャンゼリゼ)」だったのですが、今日は、その前衛的な美しさをみせる空間について書いてみたいと思います。
続きを読む
投稿日:2012.07.05
ヤオコー川越美術館(三栖右嗣記念館)(photo by Toshio Kaneko)
建築設計:伊東豊雄建築設計事務所
住宅地にオープンした小さな美術館
今回は最近の私の仕事の中から、今年3月にオープンした「ヤオコー川越美術館(三栖右嗣記念館)」についてお話したいと思います。
一般に美術館建築の照明デザインは、住宅やオフィス・商業施設などに比べて、何倍も光そのものに対して注意深く取り扱わねばなりません。美術品というのは私たち人間のとても大切な財産なので、それが光によって損傷しないように注意を払わねばならないのです。
光のなかで、特に注意しなければならないのは赤外線と紫外線です。 蛍光灯や白熱電球の光を、そのまま絵画に当てると紫外線の作用による退色や赤外線が熱を与え劣化させるなどのダメージを与えてしまいます。そこで、照明器具に紫外線や赤外線をカットするフィルターを装着させたりといったケアをしなければならないのです。また、美術品への光の当て方にも注意が必要です。作品の表面に光源が映り込んだりしないように適切な照射角度を算出して決めなければならないのです。
そのようなわけで、美術館の照明デザインは、プロの腕の見せ所!といった感じもいたします。最初にこのプロジェクトの依頼の電話を受けた時には、「よし、腕を振るうプロジェクトがきた!」と思わず叫びたくなるほど嬉しかったことを覚えています。
しかし、この美術館建築の説明を受けてみると、本当の意味で腕を振るうことになったのです・・・。「どうも既存の照明手法では簡単に解ける照明デザインではない!」
照明デザイナーとしては大いなるチャレンジをすることとなったのでした。
続きを読む
投稿日 : 2012.06.21
これからの照明が見える見本市
今回は前回の予告通り、この春にフランクフルトで行われた国際照明・建築技術専門見本市「Light+Building(ライトアンドビルディング) 2012」についてレポートさせていただきます。
まず、今年の大きな特徴は、ヨーロッパでもようやく展示の大部分がLEDになっていたということです。前回は2年前の開催で、LEDの製品は半分くらいという印象でしたが、それが今回は全体の85%くらいを占めていたように思います。顕著なところで言えば、ドイツの一流メーカー「ERCO(エルコ)」の新作の98%はLEDだと聞きました。
やはり、日本同様、だいぶ定着してきたなぁという印象です。ヨーロッパでLEDの普及が遅れている理由の一つは、そのマーケットにアラブの国々があるからだとも言われています。つまりオイルマネーで潤う国々ではエネルギーの節約にあまり積極的でないこと、気温の高い地域のため熱に弱いLEDがなじまないことなどが理由のようです。
しかし、重い腰を上げたヨーロッパでは、日本と違った解釈でLEDの特徴をうまく生かした楽しいプロダクトが数多く見受けられました。
続きを読む
投稿日 : 2012.06.07
照明業界のビッグイベント
皆様こんにちは、東海林弘靖です。前回はアメリカへの旅をご報告させていただきましたが、今年は春に10日間ほどかけてヨーロッパも旅してまいりました。主な目的は、ドイツのフランクフルトで2年に1度開催される世界最大級の国際照明・建築技術専門見本市「Light+Building(ライトアンドビルディング) 2012」にて、世界の照明業界の動向を調査するためだったのです。
同イベントはヨーロッパを中心とした主要なメーカーに加え、北米やアジア各国のメーカーが一堂に会し、新作や最新技術などを発表しているのですが、世界最大級だけあって会場を足が棒になるくらい歩いても歩いてもまわりきれないほど、非常に規模が大きな見本市です。もちろんとても1日では見切れず、少なくとも3日間をかけなければなりません。
これほど照明漬けの日々を過ごしていると本当に浮かれるのですが、会場にはちょっと気晴らしになるコーナーも用意されています。それは、毎回このイベントを訪れるたびに立ち寄るのを楽しみにしている「ミュージアム・ショップ」です。ここには、照明や建築、インテリアに係る書籍をはじめ、気の利いたお土産になりそうな小物たちが集められているのです。
今回はそこで見つけた、いかにもヨーロッパらしいアイテムを紹介させていただこうと思います。
続きを読む
投稿日 : 2012.05.31
今日はちょっと一息ついて私の近況をお伝えします
皆様こんにちは、
光のソムリエ東海林弘靖です。4月より新装になったこのブログもようやく滑り出した感じです。今日はちょっと一息ついて私の近況をお伝えしたいと思います。
この5月は、久しぶりにアメリカへ旅をいたしました。目指したのはラスベガスです。いや、大金を稼ぐために向かったわけではありませんよ。この季節にアメリカ照明器具業界の見本市である「LIGHTFAIR 2012」に参加するために出かけたのです。5月10日から4泊6日のスケジュールで行ってまいりました。
続きを読む
投稿日 : 2012.05.17
興味深い絵本をいただきました
先日、ニューヨークに行ってきたー!という友人から「お土産です」との言葉を添えて、大変興味深い絵本をいただきました。何せその絵本のタイトルは「BLACKOUT」、日本語に訳すと「停電」や「消灯」という意味であったからです。
物語はニューヨークのある夏の夜の出来事です。主人公の少年は、アパートでパパ、ママ、おねえちゃんとの4人家族で暮らしています。その夜、少年はすごろくゲームをしようと誰かを誘おうとするのですが、みんな仕事に家事、友達との電話に忙しくかまってもらえません。
しかたなく、自室に戻りテレビゲームをしようとしたところ、突然部屋が真っ暗に! そう、街全体が停電になってしまうのです。
続きを読む
投稿日 : 2012.05.02
丸い形のカワイイ奴!
白熱電球のフォルムを見ていると、とても親しみやすく、なんだかほのぼのとした気持ちにさせてくれます。あの丸いカタチにはいつもニヒルにふるまおうとしている少々固めの建築ショーメイ・デザイナーのワタクシでさえ、「いいね!」と言ってしまいそうです。
これって、私たちが子どもの頃から電球が切れるごとに新しい球を手に取り交換していたことに起因しているのでしょう。電球に触れ、無意識のうちにその形に愛着を感じているのだと考えます。それだけ、白熱電球というものがいままでの私たちの暮らしに密接に入り込んでいた証しです。
私も電球シルエットに魅せられ、気づけばいろんな電球型グッズのコレクションが増えているのです。上の写真はその一部でございます。電球型アルコールランプにLEDキーホルダー、カフスや一輪挿しなどなど。どれもその形状を生かした作りになっています。
しかし、そもそも電球は何故この形なのでしょう? 今回はそんな電球のカタチについてちょっと考えてみました。
続きを読む
投稿日 : 2012.04.19
「LED Next Stage 2012」会場風景より
かくしてLED電球は広まった?
LED電球が白熱電球の代わりとして世に登場してから、はや3年が経とうとしています。ちょうど3年前(2009年)に大手家電メーカー各社がこぞってLED電球を発売し、翌年には「全面LEDを導入した店舗や商業施設がオープン」という新聞記事も目立つようになりました。そして、昨年は未曾有の大震災と原発事故を受け、省エネで長寿命の新電球に期待する声が高まり、家庭への普及が急速に広まったという状況にあるのです。
みなさん身の回りを見渡してみてください。こんなところにもLED電球が使われている・・・特に人がたくさん集まる空間、コンビニやデパート、駅、あるいはいつもの居酒屋さんにもいつの間にかLED化が進んではいませんか? ひょっとして未だにLED化していないのは我が家だけであろうか? そんな不安感さえ募りそうです。
しかし、そんなに焦る必要はありません。「LEDが普通の時代」はすぐそこまで来ていて、技術も日々進歩していますから、じっくり見極めて導入する方が賢いのです。長寿命ゆえに約10年間のお付き合いになるのですから。
そんな中で私たちの意思をもって自然に切り替わる時期は、10年後すなわち2022年ではないか?と感じています。今回は、2022年の私たちの照明とのかかわりがどうなっているのかを空想してみたいと思います
続きを読む
投稿日 : 2012.04.05
MINNA NO IE (photo by Toshio Kaneko) → Project
間田央+間田真矢/mamm-design
ようこそ、光のソムリエ・プルミエールへ
みなさん、こんにちは。東海林弘靖です。ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、私は2007年より三井不動産レジデンシャルのコミュニティサイト「みんなの住まい」の中で、「光のソムリエ」というブログを連載させていただいておりました。そこでは今まで私が体験してきた光の情景をはじめ、暮らしを彩るちょっとした照明のアイデアなど、さまざまな光を楽しむコンテンツをご紹介させていただきました。
“光は「量」より「質」!こだわれば暮らしはデリシャスに進化する”このキャッチフレーズのもとに約200のコラムをブログアップいたしましたが、今回それをさらに進化させたブログ「光のソムリエ・プルミエール」をお届けいたします。「照明は私たちすべての人生の時間を、美しく価値高いものにするために工夫すべき」というスタンスで光と照明、そして私たちの暮らしにかかわる話題を追求してまいりますので、「光のソムリエ」に引き続きご一読いただければ幸いです。
続きを読む
|