投稿日:2013,6,20
photo by Akito Goto
照明デザイナー魂に火をつけた相談
去る3月に、照明だけでなく光を受ける空間の素材の選択にまで、とことんこだわりながら進めてきたプロジェクトが完成しました。それは、名古屋第二赤十字病院の新生児科という産まれたばかりの赤ちゃんを専門的に診ているお医者さまからの依頼を受けて始まったプロジェクトでした。
対象となった空間は、NICU(新生児集中治療室)という特別な治療空間で、そこでは照明がとても重要なのだと言うのです。新生児科の部長でもあるその先生はNICUを改築するにあたり、内装の色や光について色々と調べているうちに照明デザイナーという存在に気が付きます。そして、この改築プロジェクトに照明デザイナーに参加してもらおう・・・となったそうなのですが、聞けばその空間のニーズというのは照明デザイナーの職業意識に火をつけるような内容であったのです。
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投稿日:2013,6,6
IALD-Japan主催 Enlighten Asia in Japan 2013フェアウェルパーティー風景
photo by Toshio Kaneko
照明デザイナーという職業
こんにちは。東海林弘靖です。突然ですが、国際照明デザイナー協会 (International Association of Lighting Designers - IALD)をご存じでしょうか? 国際照明デザイナー協会は、米国シカゴに本部を持つ世界最大のプロの照明デザイナーの職能集団で、現在全世界中に700名ほどの会員が登録しています。
その協会に加盟するIALD-Japanは日本の代表的な照明デザイナー集団で、現在70名程が加入しています。照明デザイナーを志す人ならば、ぜひ知っておいていただきたい組織です。私がアメリカの国際照明デザイナー協会本部のほうに所属したのは、かれこれ20数年前のことですが、当時、日本ではあまり知られておらず、日本人の会員は二人しかいませんでした。
入会に関しては、照明デザイナーとしての経歴などが問われるほか、かなり厳格な倫理規定が設けられており、そのひとつには“照明器具の製造や販売を行わない”という項目があるのです。簡単に言うと、照明デザイナーはデザイン業で対価をいただくのであって、照明器具を作ったり、売ることに直接かかわってはいけないということなのです。・・・なぜこのような規定が設けられているのか? 今回は、このお話をしてみたいと思うのです。
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投稿日:2013,5,23
ライティング・フェア2013にて
最近、ソムリエの田崎真也さんの著書『言葉で伝える技術』という本を読みました。ワインの世界には、その印象、香りや味わいを言葉で言い表すルールがしっかりと出来上がっているというのです。
飲んだ人々が勝手に自分の言葉だけで伝えようとしても第三者へは、なかなか伝わらないのでしょう。ワインの世界観では、人間の感覚に訴えその価値を認めてもらう必要があるので、漠然とした言語表現では無く、体系にのっとった言葉の言い回しが大切なのだという主張だったのです。そして、そのワインの業界は、この言葉による体系ができた1980年代以降世界中を席巻するほどにブームを引き起こしたということらしいのです。
そんなことをインプットされつつ今回ご紹介したいと思ったのは、去る3月に「ライティング・フェア2013」の中で開催された「有明あかりスタジオ」というブースのことです。このブースは一般の方にも照明デザインやデザイナーをより身近に感じていただけるように、55名の照明デザイナーの仕事が展示されたのですが、ブースの半分はラジオスタジオ風のつくりになっておりました。 「有明あかりスタジオ」とは、ここに照明デザイナーが登場する・・・という企画でもあったのです。
上記の写真はそこで行われたトークショー「オール・ライト・ニッポン」の様子です。そう、このトークショーは皆様の想像通り、かの長寿ラジオ番組「オール・ナイト・ニッポン」をモチーフにしたラジオ番組風トークショーです。これこそまさに、何とか言葉だけで照明の世界を伝えようと試みた大変ユニークなイベントだったのです。
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photo by Toshio Kaneko
投稿日:2013,5,9
自宅での憩いのとき
週末の深夜、家でひとり、ワインを楽しんでいたときのことです。飲みはじめたときは気にならなかったのですが、しばらくしてちょっと部屋が明るすぎるかなと感じてきたので、調光器で明るさをぐーっと落としてみました。
そして、良い暗さをつくれたかと思い、再びてワインを飲みはじめたのですが、今度は暗くしすぎてしまったなと感じ、ほんの少しですが調光器のつまみを戻してみたのです。よし、これで完璧! 最適な暗さをつくることができたのです。
午前2時のあまりにも私的な出来事なのでしたが、この時にふと随分と昔の話がよみがえってまいりました。それは、舞台専門の照明コンサルタントの方に「ローエンド」という言葉を教えていただいた時のことでした。舞台照明の専門用語である「ローエンド」とは、これ以上暗くしてはならない“究極の最低”の明るさを言うようです。
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2001年発足当時のライトデザイン入口 photo by Toshio Kaneko
投稿日:2013,4,18
独り立ちを考える
4月、新たなスタートを切る季節です。新入生、新社会人はもちろんのこと、新しいプロジェクトに着手したり、あるいは自分で新たにビジネスを始めたなんて方もいるかもしれません。実は我らがライトデザインからも今年一人独立を果たしたスタッフがいます。今回は、彼の独立の過程をお披露目しながら新しい期のスタートに際する心持をテーマに語ってみることといたします。
今回独立を果たした彼は、学生の頃からインターンシップ生として働いていた若者でした。しかし、大学を卒業したからといって、すぐにスタッフとなった訳ではありませんでした。照明メーカーのインハウスデザイナーとして5年の修行ののち、さらに照明デザインのメッカと言えるニューヨークで1年の研鑽を積み、ようやく正式なスタッフとしてライトデザインに入社したという長い道のりを経験しているのです。
ライトデザインに入社して4年、照明デザイン歴はトータル10年という節目に独立を果たしたことになります。昨年より独立への計画を私と相談しながら進めていたのですが(久しぶりに私が独立した時期のことを思い返したりいたしました)、ようやく独立への準備がほとんど整った昨年末のことです。
「ところで独立したら事務所はどうするの?」と聞いたところ、私には少々意外な言葉が返ってきたのです。
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投稿日:2013,4,4
機能性が物言う、光のソムリエの遂行品
こんにちは。東海林弘靖です。さて今週から4月に入り、街には新入生や新社会人の初々しい姿を見かけるようになりました。彼らのようなフレッシャーズでなくとも、ピシッと気持ちも新たになるのがこの季節です。デパートやショッピングセンターでは“新生活”を銘打って、いろんなアイテムの新調を勧めるのもこの季節です。
そこで今回のテーマに「私がお勧めするノート」のことを書いてみようという気分になったのです。この季節ですから、何か新しいノートを開いてみるのもいいですよね・・・。実は私は長い間、気に入ったノートに出会うことができませんでした。あれを買い、これを買い、いろいろ試した結果、最近ようやくこれぞ!というお気に入りを見つけました。
「そうだ!今日はブログでこのノートをご紹介しよう!」と考え、朝、オフィスに向かう電車の中でそのノートを眺めていたところ、いままで使っていた自分さえもまったく気づいていなかった、そのノートのデザインのこだわりを、今日改めて発見してしまったのです。
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カタログをめくりながら・・・
こんにちは。東海林弘靖です。今回は久しぶりに新しい照明器具をご紹介いたします。まずは上記の写真をご覧ください。こちらが、私が今気になっている照明器具のひとつです。
よーく見てください・・・壁に付けられたキャンドルのように見えますが、その隣にはマッチのようなものもありますね・・・では、このアイテムのもうひとつの写真をお見せいたしましょう。
(以下に表示されていない方は、ぜひ「続きを読む」をクリックしてください。)
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photo:ライティング・フェア2013(※写真はライティング・フェア2011のものです。)
投稿日:2013,3,1
最新技術や照明デザインを肌で感じる4日間
来週3月5日(火)~8日(金)の間、最先端の照明製品や技術を集めたアジア最大級の展示会「ライティング・フェア2013」が東京ビッグサイトで開催されます。これは2年に1度催される日本の照明業界の一大イベントで、会場には日本を代表する230社以上の照明メーカーが一堂に会します。
また、ステージなどでは照明の活用事例や旬な動向などのセミナーやシンポジウムなどが展開されるのですが、今年の大きな特徴はこれらのイベント企画の中に、“照明デザイン"というテーマがダイナミックに折り込まれたことです。期間中はさまざまな照明デザイナーが登場し、一般の方にも馴染みやすいような柔らかいテーマから、照明関係者も耳に入れておきたいような最新照明の今後まで、趣向を凝らしたコンテンツが毎日発信され、必見・必聴の情報が満載です。
私も出演させていただくのですが、それ以外にも私自身もぜひ見に行きたいと思っているプログラムがたくさんあります。今回はそんなライティング・フェアの見どころをご紹介いたしましょう。
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illustration by Hiroyasu Shoji
投稿日:2013,2,21
照明といえば天井?
今回は皆さんへの質問から入ってみましょう!
「あなたの身の回りにある照明器具は、部屋のどこに付けられていますか?」
ご自宅、勤め先、買い物をするお店など・・・の空間を思い出してみましょう。
恐らく、かなりの照明器具は天井に付けられているでしょう。そう、現代の生活では、照明は天井についているのが一般的となっています。
いったい、いつ頃から照明器具が天井に付けられてきたのか?
調べてみたことがありますが、実はその歴史を紐解いてみると、始まりはそう遠い昔のことではないようです。
天井に照明器具がつけられ始めたのは、せいぜい150年くらい前からのことのようです。それまではキャンドルやオイルランプの時代、当時はテーブルや棚、壁などに“置くスタイル”が照明でしたから。それがガスや電気をエネルギー源として照明をとるという、時代を経て天井へと移動していったようです。
さらに天井照明のトレンドは、エジソンが電球の実用化に成功した19世紀後半から20世紀に入り急速にその傾向が強まりました。特に、天井に照明器具を埋め込む「ダウンライト」が発明された20世紀前半からは、照明器具は天井につけるもの!とさえ言えるような時代になったのです。
今日は、そんなダウンライトにまつわるお話を書いてまいりましょう。
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photo by Toshio Kaneko
投稿日:2013,2,7
東京にアジアの照明デザイナーが集まった
こんにちは。東海林弘靖です。今回は、昨年11月に開催したトークイベント「照明力特別企画 ASIAN POWER OF LIGHT(アジアンパワー・オブ・ライト)」のレポートをお届けしたいと思います。
このイベントは、前回も少しお話いたしましたが、円卓会議・照明楽会(内原智史+東海林弘靖+武石正宣+東宮洋美+富田泰行)が2002年より毎年、冬の時期に開催するイベントの2012年版として開催したものです。
今回は、中国、韓国、タイというアジアの国で活躍する照明デザイナー5人をお迎えし、それぞれの国の動向や文化性を語っていただくというイベントとなりました。なにせ初めて海外からゲストをお呼びしたもので、中・韓・英⇔和の同時通訳を聞きながらの凄いイベントとなったのです。
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