Vol.20│照明はアジアから

オリエンタルな共通認識

photo by charles chan
投稿日:2013,1,24

 

今年の照明業界は・・・

前回、このブログでは北京での仕事をご紹介させていただきましたが、中国や台湾などでの仕事が増えてきたのは3、4年前からでしょうか。最初は慣れなかった日本以外で仕事をすることも、最近は少しずつ勝手がわかるようになってまいりました。

アジア圏で仕事が次第に増えてきたという傾向は、実は私に限ったことではありません。日本の照明デザイナーすべてに当てはまることのようです。また、中国や韓国にもたくさんの照明デザイナーがいらっしゃって、彼らは、逆に日本の照明デザインに大いに関心を寄せているようです。そして気が付けば、アジアの照明デザイナー同士との交流や連携も少しずつ増えてきています。

今回は、そんなアジアのなかでの日本の照明デザインについてお話しをさせていただきましょう!




「アジア」を冠した照明イベント

私も発足人メンバーの一人を務めている「円卓会議・照明楽会」という5人の照明デザイナーが連携してイベントを行うユニット(集まり)があるのですが、昨年はずばり、「ASIAN POWER OF LIGHT(アジアン・パワー・オブ・ライト)」と題し、アジアの国々の照明デザイナーをお迎えしてトークショーとシンポジウムを開催いたしました。

ゲストとしてお迎えしたのは、アジアの照明デザイナーの方々で、韓国から2名、中国から2名、そしてタイから1名お招きしての開催となりました。そこでは、それぞれの方のプレゼンテーションのほかに「街のあかり」と「ポピュラーソングの歌詞にみる光」をテーマとしたそれぞれのお国柄の違いを語り合ったりしたのです。大げさにいえば、国際会議となるのでしょうが、私たちのイベントは「誰にでもわかりやすく、そして楽しく!」がモットーですので、国際会議などという堅苦しいものではなく、アジアの照明デザイナーの発表会という感じでもありました。

特に「ポピュラーソングの歌詞にみる光」は、それぞれの国のポピュラーソングの歌詞にみる灯りや照明のキーワードをテーマに、その国の文化や慣習を語るという趣旨だったのですが、それぞれに持ち寄ったアジアの曲はどれも美しく思わず皆で涙するような場面もあったのがとても素晴らしい共有体験となったのです。終了後には、「今度は私の国でやりましょう!」という提案もあったりして、ますますアジア間での交流は楽しみになる2013年です。

ちなみに2013年3月には、東京で2年に1度の照明の見本市「ライティングフェア2013」が開催される予定となっており、現在、私も含めて、日本の照明デザイナー55人を含む照明業界全体が、その準備を進めています。その大きなイベントの中には照明デザイナーの国際会議である「エンライテン・アジア・イン・ジャパン」という(こちらはしっかりとした国際会議です)も同じく東京ビッグサイトで開催されます。ますます交流が進む照明業界、この会議は事前登録の上、どなたでも参加できますのでご興味のある方は3月を楽しみにしていてくださいませ。





渦巻くアジアの照明

韓国、ソウルの夜景 photo by math89

このように日本の照明業界は、「日本」から「アジア」へとフィールドを拡大すると同時に、アジアから日本へ進出してくる照明メーカーも沢山出てくる・・・照明業界を取り巻く環境は刻々と変化しつつあるようです。

その理由には日本の景気がぱっとしない一方で、中国大陸では、今まさに経済成長の只中にある・・・といった経済的な理由が一つ上げられますが、一方で多くの日本の照明デザイナーが中国で活躍しているのは、日本がいち早く経済発展を遂げたことで、建築や照明デザインが洗練されているからかもしれません。中国や韓国から見れば、近くの素晴らしいデザインを大いに輸入し、早く日本のような質の高い環境をつくりたい・・・そう考えてのことではないでしょうか?

私たち日本の照明デザイナーは、日本という風土の中で培ってきた「繊細で洗練された感覚」を持って、広くアジアの世界で新しいデザインの可能性を探求する時代となってきたようです。そして、やがて、日本人の感覚よりもダイナミックフィーリングを持つアジアの優秀な照明デザイナーが日本で活躍する日も近いかもしれません。

 

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PROFILE
東海林弘靖 / Hiroyasu Shoji

1958年生まれ。工学院大学・大学院建築学専攻修士課程修了。
光と建築空間との関係に興味を持ち、建築デザインから照明デザインの道に入る。1990年より地球上の感動的な光と出会うために世界中を探索調査、アラスカのオーロラからサハラ砂漠の月夜など自然の美しい光を取材し続けている。2000年に有限会社ライトデザインを銀座に設立。超高層建築のファサードから美術館、図書館、商業施設、レストラン・バーなどの飲食空間まで幅広い光のデザインを行っている。光に関わる楽しいことには何でも挑戦! を信条に、日本初の試みであるL J (Light Jockey)のようなパフォーマンスにも実験的に取り組んでいる。







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