照明デザイナーという職業こんにちは。東海林弘靖です。突然ですが、国際照明デザイナー協会 (International Association of Lighting Designers - IALD)をご存じでしょうか? 国際照明デザイナー協会は、米国シカゴに本部を持つ世界最大のプロの照明デザイナーの職能集団で、現在全世界中に700名ほどの会員が登録しています。 その協会に加盟するIALD-Japanは日本の代表的な照明デザイナー集団で、現在70名程が加入しています。照明デザイナーを志す人ならば、ぜひ知っておいていただきたい組織です。私がアメリカの国際照明デザイナー協会本部のほうに所属したのは、かれこれ20数年前のことですが、当時、日本ではあまり知られておらず、日本人の会員は二人しかいませんでした。 入会に関しては、照明デザイナーとしての経歴などが問われるほか、かなり厳格な倫理規定が設けられており、そのひとつには“照明器具の製造や販売を行わない”という項目があるのです。簡単に言うと、照明デザイナーはデザイン業で対価をいただくのであって、照明器具を作ったり、売ることに直接かかわってはいけないということなのです。・・・なぜこのような規定が設けられているのか? 今回は、このお話をしてみたいと思うのです。
照明デザイナーの掟照明デザインとは、依頼主のリクエストを把握し、空間に光による新たな価値を生み出すようなコンセプトを立て、それを具現化する照明装置の配置や照射方向などをプランニングをすることです。そして、最終的には依頼主が満足いくような光の空間をつくる一連の仕事です。 これらの仕事が社会にとって必要不可欠であることをアピールしているのが国際照明デザイナー協会であるのですが、弁護士や医師などと同じく、社会的責務とともに提供する技術やノウハウを必要とする、尊厳をもった職能であるべきと考えられています。このような仕事のスタンスをアメリカでは「コンサルタント」と称しています。 照明デザイナーの仕事が、照明器具の製造や販売から切り離されるべき!という思想は至極当然です。例えるなら、医師が新薬の販売に直接かかわって販売量に応じた利益を得ているとしたら、それが正当な医療の提供にあたるのかどうかを問われるのと似ています。この当たり前の様な規定が必要な理由は、昔は照明デザイナーという職種がなく、照明器具を製造・販売する人や会社が商品を売るためのサービスとして、照明の設計を行ってきたという歴史があったからです。 この構図、すなわちは照明器具をたくさん売れば売るほど、その売り上げの一部からデザイン料がもらえるという仕組みでは、一つの現場でついついたくさんの照明器具を使う癖がついてしまいそうです。また、「キャンドル数本だけで演出したバーの照明」のような、シンプルなデザインを考えることさえ許さないかもしれません。これでは、必ずしも社会的な価値を期待されて行う照明デザインとは言えなくなってしまいます。そこで国際照明デザイナー協会では、私たちの職能を守るためにもこのような倫理規定が必要となった訳です。 依頼主の利益のために雇われ、その責務を全うするために、照明デザイナーは“正しきコンサルタント”であるべきなのです。 プロの照明デザイナーが集う
IALD-Japan研修会の様子
|
![]() PROFILE
|
Copyrights (C) 2012 LIGHTDESIGN INC. All Rights Reserved. |