投稿日:2013,6,6
IALD-Japan主催 Enlighten Asia in Japan 2013フェアウェルパーティー風景
photo by Toshio Kaneko
照明デザイナーという職業
こんにちは。東海林弘靖です。突然ですが、国際照明デザイナー協会 (International Association of Lighting Designers - IALD)をご存じでしょうか? 国際照明デザイナー協会は、米国シカゴに本部を持つ世界最大のプロの照明デザイナーの職能集団で、現在全世界中に700名ほどの会員が登録しています。
その協会に加盟するIALD-Japanは日本の代表的な照明デザイナー集団で、現在70名程が加入しています。照明デザイナーを志す人ならば、ぜひ知っておいていただきたい組織です。私がアメリカの国際照明デザイナー協会本部のほうに所属したのは、かれこれ20数年前のことですが、当時、日本ではあまり知られておらず、日本人の会員は二人しかいませんでした。
入会に関しては、照明デザイナーとしての経歴などが問われるほか、かなり厳格な倫理規定が設けられており、そのひとつには“照明器具の製造や販売を行わない”という項目があるのです。簡単に言うと、照明デザイナーはデザイン業で対価をいただくのであって、照明器具を作ったり、売ることに直接かかわってはいけないということなのです。・・・なぜこのような規定が設けられているのか? 今回は、このお話をしてみたいと思うのです。
照明デザイナーの掟
照明デザインとは、依頼主のリクエストを把握し、空間に光による新たな価値を生み出すようなコンセプトを立て、それを具現化する照明装置の配置や照射方向などをプランニングをすることです。そして、最終的には依頼主が満足いくような光の空間をつくる一連の仕事です。
これらの仕事が社会にとって必要不可欠であることをアピールしているのが国際照明デザイナー協会であるのですが、弁護士や医師などと同じく、社会的責務とともに提供する技術やノウハウを必要とする、尊厳をもった職能であるべきと考えられています。このような仕事のスタンスをアメリカでは「コンサルタント」と称しています。
照明デザイナーの仕事が、照明器具の製造や販売から切り離されるべき!という思想は至極当然です。例えるなら、医師が新薬の販売に直接かかわって販売量に応じた利益を得ているとしたら、それが正当な医療の提供にあたるのかどうかを問われるのと似ています。この当たり前の様な規定が必要な理由は、昔は照明デザイナーという職種がなく、照明器具を製造・販売する人や会社が商品を売るためのサービスとして、照明の設計を行ってきたという歴史があったからです。
この構図、すなわちは照明器具をたくさん売れば売るほど、その売り上げの一部からデザイン料がもらえるという仕組みでは、一つの現場でついついたくさんの照明器具を使う癖がついてしまいそうです。また、「キャンドル数本だけで演出したバーの照明」のような、シンプルなデザインを考えることさえ許さないかもしれません。これでは、必ずしも社会的な価値を期待されて行う照明デザインとは言えなくなってしまいます。そこで国際照明デザイナー協会では、私たちの職能を守るためにもこのような倫理規定が必要となった訳です。
依頼主の利益のために雇われ、その責務を全うするために、照明デザイナーは“正しきコンサルタント”であるべきなのです。
プロの照明デザイナーが集う
IALD-Japan研修会の様子
photo by Toshio Kaneko
そんなことを考えつつアメリカに遅れること約30年、2009年に日本でもようやくプロの照明デザイナーの結束する会合IALD-Japanが誕生したのです。それまで20代のデザイナーから70代の大御所先生までが一同に会することなどなかった私たちの業界でしたが、ここのところそのような会合が年に3回も開かれているのです。
これは、大変素晴らしいことです。なぜなら、若いデザイナーが何十年ものキャリアを積み重ねた先輩デザイナーの人柄やデザインの厚みを直接感じる機会が得られたからです。技術やテクニックを披露したがる血気盛んな若手デザイナーも二手も三手も先を見通す大先輩の光を読む目に圧倒されること・・・こんな環境が整備できたのかもしれません。
久しぶりに、まじめに職業のことを書いてみたのですが、何やら少し難しい話になってしまいました。そうそう、来週にはまたIALD-Japanの集まりがあるのです。毎回私が司会進行を担当させて頂いているのですが次回の議案の草稿を送らねばならないことを思い出しました・・・。(汗)
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