秋深き・・・
こんにちは。東海林弘靖です。11月も半ばを過ぎ、街にも紅葉が美しく映えてまいりました。日本には四季があるので、こうした季節ごとの色合いを楽しめる良さがありますね。晩秋の光に映し出された「真っ赤な」紅葉などはこの季節ならではの日本の色彩を感じることができます。
・・・と書いてみてふと、私にはこの“真っ赤な”というキーワードから、もうひとつ思い起こされる照明の景色があります。それはフランスのリヨンにあるオペラハウスの照明です。
改装プロジェクトで生まれ変わったオペラハウス
このオペラハウスは元々19世紀末に建てられた建築なのですが、1993年にジャン・ヌーベル(フランス人建築家)により現代的な切り口で全面改装が行われたものです。照明デザインはヤン・ケルサレ(彼は「光の彫刻家」とも呼ばれる照明デザイナー/アーティスト)によるもので、建築の世界では当時話題のプロジェクトでしたから、是非私も機会があったら見てみたいと思っておりました。幸い私は、その数年後にリヨンを訪れる機会に恵まれ、念願のリヨンオペラハウス探訪を果たすことができました。
実際にこの場所へ行ってみると、そこは真っ黒い内装と赤い光が出迎えてくれたのです。エントランスを入るととにかく黒い内装、磨かれた石の床、ツヤの消された天井、そしてファブリック、巧みにテクスチュアを変えながら、どこまでも黒い空間が続きます。そして、印象的なのが、1階の回廊部分と上のドームに配された真っ赤なライティングだったのです。
この赤と黒の対比は非常に抽象的かつ演劇的な演出なのでしょう。
日本人は色を使うのが苦手?
この赤と黒を使った空間は非常にセンセーショナルな体験で、是非自分もどこかで試してみたいと思っておりました。しかし、これがなかなか難しいことなのです。一般的に建築照明デザインでは、建築の設計段階で照明はどうしましょうか?という場面が出てきます。今回は赤でいきましょう!なんて突然言いだすと、「ショージさんはどうかしちゃったんじゃないか?」と思われかねません。
色というのはあくまで建築やインテリアのコントロールの範疇にあって、ほとんどの場合、照明デザイナーの守備範囲におかれることはありません。まれにインテリア空間において、空間演出として「真っ赤な光のバーをつくろう!」なんていうお誘いはあるかもしれませんが、その時は空間設計者もそう望んでいる訳で、その流れに照明デザイナーが同調している・・・ということなのでしょう。
つまり、照明デザイナーは色を使うなんてことをしてはいけません・・・!みたいな感じになっているのですが、さてさて、ここで、改めてこのことを考えてみました。
ひょっとしたら、それは言い訳をしているだけで、結局自分には“真っ赤”を扱いきれないから・・・そんな逃げ道に入り込んでいるのかもしれません。
季節ごとに醍醐味のある色合いに囲まれる私たち日本人が色使いが苦手だともいえないでしょう。たまたまそういうトレーニングをしていないからなだけで、本当は私たちの感性は様々な色彩を受容できるはずですし、使いこなすことだって得意なのかもしれません。この季節に色彩豊かな日本庭園を見るたびにそんなことを感じてしまうのです。
続きを閉じる
|