Vol.75│東京の新しいカタチ

再開発プロジェクトから見える未来
投稿日:2015,05,28

新スポットオープンめじろ押し!

前々回のブログで、池袋・西武百貨店に出来た新しいスポット「食と緑の空中庭園」をご紹介いたしましたが、実はこのプロジェクトの他にも、東京で最近オープンしたプロジェクトがいくつかございます。ひとつは品川に、もうひとつは世田谷区二子玉川に、そしてもうひとつは練馬区の大泉学園にそれぞれオープンいたしました。この3つのプロジェクトに共通しているのはどれも長い年月をかけての再開発プロジェクトだということです。今回はこれら再開発プロジェクトのご紹介と共に、そこから見えてくる東京の未来を覗いてみたいと思います。

 



新たなる東京の拠点

品川シーズンテラス

品川のプロジェクトとは、JR山手線・品川駅から徒歩約6分のところに、まさに本日オープンした「品川シーズンテラス」です。これは東京都の下水道施設の敷地の上に誕生した超高層のオフィスビルです。また、オフィスビルと一体的に3.5ヘクタールの広大な緑地も整備され、大都会の中心とも言える場所でありながら四季を感じる心地よい空間となっています。

さて、照明デザインなのですが、ランドスケープの照明を見ていただきましょう。ここでは都心とは思えない広大な敷地を生かしてダイナミックな照明手法がとられています。圧巻なのは高さ180メートルのビル頂部から降り注ぐ“ムーンライト”で、北側の広場に広く落とされたその人工的な月明かりは、およそ3から5ルクス。しっかりとした影を落とすとても気持ちの良いムーンライト広場となりました。

ここ品川は、近い将来に東京の新たなハブとなることが予想されている場所です。今年3月には今まで上野止まりだったJR常磐線が品川駅まで直通となりましたが、さらには2030年にリニア新幹線の始発駅の開業が予定されています。2020年のオリンピックには間に合いませんが、これが開通すると品川起点となり、渋谷、新宿、池袋などの乗り継ぎが良いことから、東京の新しい拠点として期待されているのです。品川シーズンテラスの1~3階にはレストランなどの商業施設も入るので、緑地の心地よい風を感じながらリラックスのひとときをお楽しみいただけます。

 



郊外型新拠点もあちらこちらで

二子玉川ライズ Ⅱ-a街区

さて、続いては、二子玉川と大泉学園のプロジェクトについてです。それぞれ郊外の私鉄駅から連続し、その駅の拠点となるような再開発です。

二子玉川はすでに2011年にオープンしていた「二子玉川ライズ」という複合商業施設がさらに延長されたプロジェクトなのですが、未完成だったエリアがこの4月から順次オープンいたしました。ここも以前は二子玉川園という遊園地だったものが閉園後、複合娯楽施設となり、その後2011年にショッピングモールや高層マンションなどに生まれ変わりました。そして、この4月には映画館やTSUTAYAの新業態をはじめとしたショップ、さらにこの先7月には、ホテルなどがさらにオープンしてまいります。

照明コンセプトは、光によって「行ってみたくなる街、帰りたくなる街」をつくることです。駅から細長く東へ伸びるこの敷地の中心を貫くリボンストリートを中心に夜には、美しい光と影の織りなす極めて印象的な光が続いています。駅前から、豊かな自然が広がる多摩川までを徐々に移り変わるグラデーションの光で生態系にも配慮しながら計画を進め、2005年に始まった私たちのプロジェクトは、ほぼ10年にわたる長い仕事としてようやく完了を迎えたのです。
 
もう一方、大泉学園ですが、こちらは西武線大泉学園駅に直結した形で高層マンションと商業施設からなる「リズモ大泉学園」が同じく4月にオープンしました。郊外の拠点となる駅で、ここからバスが発着し沢山の人々がこの駅を利用するのです。これまで、駅の周辺はやや過密でゆったりと時を過ごす場所がなかなか見つからなかったのですが、この施設の開業によって、駅で降りた後でも一息ついてお茶でも飲もう・・・、そんな雰囲気が生まれてきました。そうそう肝心の照明ですが、こちらは「麗しき武蔵野・大泉学園の光」とし、優しく包み込まれるような温かい光で構成しました。また、大泉学園といえば、アニメの町としても有名(近くにアニメ撮影所があった)なので、建物のファサードには、夜になるとアニメのような可愛らしく動く光が現れます。

 



多くの関係者の思いを光に

リズモ大泉学園

これらの再開発プロジェクトは建設期間だけ見ると短くて3~5年、長いと10年くらいかかっています。しかし、当初の計画がスタートした時からのプロジェクト期間を数えると、なんと30年から40年もの長い年月がかかっています。

街を新しくつくり変えようと言うのですから、まずその街の人達が協議をし、それに対して専門家なども加わり、未来の町の青写真をつくることから始まり、さらにはそこに元々住んでいた方や商売をしていた方などの土地をいったん権利変換する・・・、という工程があります。もちろん、計画に反対の意見もあったりと一筋縄ではいかないこともあるでしょう。意見がまとまったところで、資本参加する不動産ディベロッパーを決めて開発事業が始まる訳ですが、そこには沢山の許認可手続きが必要で、とにかく長い時間がかかってしまします。

私たち照明デザイナーが登場するのは、これらプロジェクトがいよいよフィニッシュに向かって建設工事が始まる直前のタイミングとなるのです。長い時間をかけて理想の街づくりを目指してきた沢山の方々の期待を一身に受けて、最後の仕上げをお手伝いさせていただくような関わり方なのです。何度も、何度も繰り返し、照明のデザインについて再開発組合のすべての関係者の方に、ご説明をさせていただき、ようやく完成に至るのですから責任重大です。

どのプロジェクトも、照明デザイナーとして何ができるのか?関係者の想いとは?その土地が伝えていきたい記憶とは?その地に求められる光とは?ひとつひとつ丁寧に読み解き、そしてこれからも追求してまいりたいと思います。
さて、今宵はムーンライト広場を訪れて2030年の東京に思いを馳せると致しましょう…。

 

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PROFILE
東海林弘靖 / Hiroyasu Shoji

1958年生まれ。工学院大学・大学院建築学専攻修士課程修了。
光と建築空間との関係に興味を持ち、建築デザインから照明デザインの道に入る。1990年より地球上の感動的な光と出会うために世界中を探索調査、アラスカのオーロラからサハラ砂漠の月夜など自然の美しい光を取材し続けている。2000年に有限会社ライトデザインを銀座に設立。超高層建築のファサードから美術館、図書館、商業施設、レストラン・バーなどの飲食空間まで幅広い光のデザインを行っている。光に関わる楽しいことには何でも挑戦! を信条に、日本初の試みであるL J (Light Jockey)のようなパフォーマンスにも実験的に取り組んでいる。

 



 

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