21世紀のイノベーション
青色発光ダイオードの実用化とその応用技術の進化により、21世紀以降、カラーライティングが世界中で大ヒットし続けています。LED光源をコンピューターでコントロールしてさまざまな色を発色させるという技術が世界を席巻し、メディアファサードと呼ばれる映像装置としての建築が生まれるようになりました・・・と、ここまでは、前回のブログにも記したとおりの復習です。
2015年、この一連のブームも一段落して、そろそろ本来の建築と照明の適切な関係が再構築される時代になってきたように思うのですが、最近の情報によれば、このカラーライティングのジャンルも更なる深化を遂げている・・・というのです。今回のブログでは、その辺の事情を掘り下げてみたいと思います。
光と絵具の三原色
さて、カラーライティングの深化をお話しする上で、まず解説せねばならないのが、「色の三原色」です。まずは物体色の世界から確認してまいりましょう!
いわゆる絵の具の三原色は、「赤・青・黄」です。インクの呼び名でいうと「マゼンタ・シアン・イエロー」なのですが、家電量販店のプリンターインク売り場には、6色インクなるものが、今では当然のように並んでいます。6色というのは、3原色にブラックを加えて、さらにライトシアンとライトマゼンタを加えて6色というスペックです。この6色インクカートリッジを使うプリンターで印刷すると、写真の色が鮮やかになる・・・ということで最近では一般化されていますが、グリーンとレッドを加えて8色インクなるものまで出ていることは、つい最近知ったものです。(不勉強でした・・・)
光の3原色である「赤・緑・青」の世界も、物体色と同じように3色配合から白色を加えた4色、さらにアンバー色を加えた配合などがでてまいりました。「微妙な色味をつくりたい」と願うのは、主に繊細なフィルターワークを駆使してこられた舞台照明の技術者なのかもしれませんが、私も赤・緑・青の3色で作れる世界には限界を感じていた矢先のことでした。
カスタマイズできる色の世界
先日、実際の仕事で事業主の要望があって、ファサードの一部をゴールド色に染め上げる計画が進んできました。しかし、ゴールド色を再現するのはなかなか難しいものでした。確かに、ゴールドというのは光の色というよりも、光が当たった物体の表面の煌めく状態も取り込まれた現象なのです。そこで、カラーライティングの専門照明メーカーの技術者に聞いてみたところ、疑似的なゴールドを光の工夫だけでつくるには、アンバー色が有用だというのです。アンバー色、すなわち深い赤みがかったオレンジ色とでもいうのでしょうか? 世の中には、独特の深いアンバー色を発するLED素子があって、それを電球色LEDで薄める(混ぜ合わせる)と、いい感じのゴールドができるのだそうです。
実際に実験をしてみました。するとなかなか良い感じのゴールドになりました。またアンバー色と電球色のブレンド比率を変えると、やや薄いゴールドから濃くて渋いゴールドまでを自由につくることができました。そして、隠し味にある色味をほんの少し加えてみるのですが、ここは企業秘密ということで・・・。
“スカッと、ジャパーン!”的な色
さて、最近のカラーライティングの潮流は同時多発的に進んでいるようで、つい先日も別のカラーライティング専門メーカーから商品の紹介がありました。それは、RGBの光の三原色にこだわらない商品でした。
この商品、グリーンの色の代わりに黄緑っぽい「ライム」という色が使われているのです。すなわちRGBではなく、RLBになっているのですが、それはいったいどんな感じになるの?と担当の方に聞いた時、返ってきたお返事が、「スカッと、ジャパーン!」というお答えがかえってまいりました。ほどなく準備が整って電源を入れました・・・そして、その場を囲んでいた数名のスタッフの間に笑いが起きたのです。
「スカッとジャパーン!爽快な色味だね!」グリーンからライム色に変えてみると、スッキリと抜けたような、さわやかな明るさが再現されるようです。濃い緑から明るいライム色になることで、再生できない色味もでてくるのですが、今までに見たことのない微妙なキレイな色出しが可能になったというのは画期的です。
カラーライティングの深化は、このようにRGBの3つにこだわらず、自在に3つの色を組み合わせたり、あるいは4つの色を加えたり・・・というカスタムオーダーが可能となってきているのです。私たち照明デザイナーにとっては3色しかなかった光の絵の具が12色くらいに増えたような感覚です。照明デザインは、色の表現の豊かさも加わって、より深い表現世界に入る扉が開かれたのかもしれません。ただし、丁寧に建築と照明の適切な関係を探っていく中でのことですね。
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