あのソムリエの言葉このブログでは、ときどき私のお気に入りの言葉を紹介しておりますが、最近とても気になっているフレーズに、「お客様のものですから・・・」というのがあります。この言葉、以前から様々なところで耳にしていた言葉ですが、かの有名なソムリエの田崎真也さんのワイン教習用のDVDを見ていた時のことです。 ソムリエの資格試験の実技の中に、デキャンタージュというものがあり、その実技レクチャーでもこの言葉が出てまいりました。デキャンタージュとは、ヴィンテージワインなどの香りを立てることに加えて、オリ(沈殿物)を除く目的で、開栓後にワインをいったんデキャンタに注ぎ移すことで、オリがボトル側に残るようにワインを注ぎます。この時、あまりボトルにワインを残しすぎるのはNG、つまりお客様が飲む分量が減ってしまわないようにしなければなりません。すでにワインは「お客様のものですから」という訳です。
照明デザインの仕事でもphoto by Zach Den Adelさて、この気になっている言葉は、照明デザインの仕事にあてはまるのでしょうか? もうかなりその話題で議論が尽くされた感があるときに、「であなたはどの案が一番おすすめですか?」という問いが私に投げかけられます。そこで私は「A案!!」と心の中でつぶやきながら、こう答えてみるのです。「お客様のものですから…」と。決して投げやりになっているからそう言っているのではありません。デザインは、デザイナーの私物ではなく、空間を使うユーザーやその建物のオーナーのものであるのです。デザイナーの熱い思いは、つくるときには必要ですが、その思いをわかってもらえるかどうか?が最大の問題なのではありません。良いデザインとは、お客様に満足していただけるのか否かにかかっているのです。 「ただ私は〇〇という点でA案が〇〇〇〇〇でよいかと思います。」と続けてみると、不思議なことに「やはり、照明デザイナーのおすすめ案にしてみましょうか!」という展開になることもあるものです。決して照明デザイナーがむきになって主張してはいけないのです。仮に照明デザイナーが絶対にこの案しかない!などというエゴイスティックな発言をしたならば、その案に決まる可能性はぐうーっと低くなるのでしょう。私たちは、情熱的な創造力だけでなく、クライアント側に立った判断ができる冷静な感覚をも求められているのですから。
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