Vol.134|現場に持っていくべき必需品

“使えないアシスタントよりもガムテープ”
投稿日:2018,02,08
photo by LIGHTDESIGN INC.

色んな現場で役立つ存在

“使えないアシスタントよりもガムテープ”というのは、長きに渡りライトデザインの照明写真を撮影してくださっているカメラマンの金子俊男さんが言った名言で、私もまさにその通りだと思っている言葉です。そう、現場いく時にはとにかくガムテープを持って行け! と、ライトデザインの歴代のスタッフ達にも伝えてまいりました。

それほどに重要なアイテムがガムテープなのですが、それはどう役立つのか?たかがガムテープ、されどガムテープ!!今回は、秘伝ガムテープのストーリーを、私の経験談や金子さんのお話を中心にご紹介しましょう。何か大きな人生へのヒントが隠されているかもしれませんよ!



先輩からも推されたガムテープ

まず、私が最初にガムテープの重要性を教わったのは今から33年前、まだ照明の仕事をはじめたばかりのことでした。先輩の小林さんという方に連れられて現場に出るときに、ガムテープを持って来いと言われたのです。ガムテープで何をするのかなぁと思いながらも、ベージュ色のよくある普通のガムテープをカバンに入れて現場に赴きました。

その時の仕事というのは当時勤めていた照明デザイン事務所の親会社である照明器具メーカーから依頼された仕事で、仕事を終えると、そこには照明器具が入っていた段ボール箱が残されていました。どうするのかなぁと思っていると、小林さんはカッターで段ボールを切って、畳んで、重ねて、「ハイ、ガムテープちょうだい。」と言って、重ねられた段ボールを手際よくクルクルっピッピッと持って帰りやすいようにコンパクトにひと塊にまとめたのです。
 
その時、ガムテープはこんな風に使うんですね?と言うと、そうガムテープはとにかく必需品だと、色んな事に使えるから現場に行くときは忘れずに持って来い、一番大事なのはガムテープなんだ!と教わったのです。



ガムテープをより使いやすく

その数年後、建築照明を中心とした写真撮影で活躍されているプロカメラマンの金子俊男さんに出会い、その撮影に立ち会ったときのことでした。カメラを固定する三脚を見ると、その足元の部分に黒いガムテープがぐりぐり巻きつけられているのを見つけました。どうやら写真撮影にもガムテープは必需品であり、金子さんはそういったもの忘れたり、持ち運びにかさばるのが嫌で、一旦引き出したある程度の長さのガムテープを三脚の脚にまるで糸巻のように巻きなおした状態で持ち運んでいたのです。

しかも、それは黒と白の2種類のガムテープが巻かれていました。黒のガムテープは三脚の脚の位置を示すときに床にマーカーとして貼ったり、無駄な光を抑える時に使用します。また白いガムテープは白い大理石の壁についている設備機器を目立たないようにカバーしたりする時に重宝するようでした。

その時に金子さんが言ったのが、“使えないアシスタントよりもガムテープのほうが役に立つ”という名言でした。



三種の神器

現在、ガムテープも色んな種類があります。基本的にカッターなしでも手でちぎれる布タイプが便利です。そして、特に照明の現場で役立つタイプが3つあります。まずは先の撮影話でも出てきた黒と白です。反射率の低い黒、そして反射率の高い白です。それから、布テープとちょっと違うものとして追加したいのが、薄いアルミニウム素材でできた銀色のテープです。これは遮光性を求めるときに使います。この3色がガムテープの三種の神器で、照明現場で大活躍します。

照明デザイナーというのは、良いコンセプトを出していても、最終的にその光を作れなければその存在価値はないので、現場での実験や調整時の奮闘は大切です。若いデザイナーには、何がなくともガムテープ!をまず覚えてもらいたいものです。

ところで、このガムテープは現場でなくとも、旅行のときにも連れていくと非常に頼もしい存在です。そんな時には、金子さん方式でコンパクトに巻き巻きして軽やかに出かけてみましょう!きっと遠い異国で、小さな力持ちが素晴らしいアシストを見せてくれるでしょう。

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PROFILE
東海林弘靖 / Hiroyasu Shoji

1958年生まれ。工学院大学・大学院建築学専攻修士課程修了。
光と建築空間との関係に興味を持ち、建築デザインから照明デザインの道に入る。1990年より地球上の感動的な光と出会うために世界中を探索調査、アラスカのオーロラからサハラ砂漠の月夜など自然の美しい光を取材し続けている。2000年に有限会社ライトデザインを銀座に設立。超高層建築のファサードから美術館、図書館、商業施設、レストラン・バーなどの飲食空間まで幅広い光のデザインを行っている。光に関わる楽しいことには何でも挑戦! を信条に、日本初の試みであるL J (Light Jockey)のようなパフォーマンスにも実験的に取り組んでいる。




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