投稿日:2015,10,08
ブロックハウス・エフロン百科事典(1890-1907年出版)より photo by Double-M
あの発明
このブログで度々話題に上り、照明を語るに欠かせないワードに、「白熱電球」があります。暖かで美しいスペクトルを発する光源として、19世紀からずっと私たちの生活を支えてきたこのランプは、いまや御役御免とばかりに姿を消そうとしています。偉大なる発明王エジソンの功績も21世紀となっては、新たな光源として登場したLED電球にその役割をバトンタッチしなければならないのです。
しかし、よくよく考えてみるとエジソンの功績は、まだまだ現役で活躍おり、これからもずーっと続いていくに違いない! そんなことに気が付いたのです。
白熱電球は誰の発明?
白熱電球の歴史をひも解くと、19世紀までさかのぼります。イングランドの物理化学者、ジョセフ・スワンが1848年ごろに開発実験を行い1860年ごろまで発光に成功したのが、そもそもの始まりです。また、時同じくして白熱電球の研究を行っていたのが、皆さんもご存知のアメリカの発明王、トーマス・エジソンです。
そう、白熱電球の発明と言えばエジソンという感覚がある方も多いでしょうが、実は白熱電球そのものの発明はジョセフ・スワンさんだったのです。しかし、1879年に白熱電球をさらに改良して、電灯の事業化に本格的に成功したのがエジソンによる功績だったことから、電球と言えば、エジソンのイメージとなったようです。この発明バトルは面白いことに今になってひとつの結果につながっているのですが、それがよくわかるのが電球の下についている“口金”なのです。
LED時代も大いに活躍する口金Eベース
上記に並んでいるのは、いままさに私たちの身の回りで使われているLED電球です。LEDはかなり小型の光源であり、照明器具に内蔵しているものが数多く出回っておりますが、私たちが住宅で使用する電球は、上の写真のように口金のついた白熱電球の形を模しているものが主流となっています。写真からもわかるように、口金の部分はすべて同じような形をしております。このねじ込み式口金はEベースと呼ばれるものなのですが、このEとはまさにエジソンのE、世界中で使われている電球口金の規格なのです。
一方、最上部のイラストを見てみてください。これは1890年~1907年にロシアから出版されていたブロックハウス・エフロン百科事典に掲載されている電球の図です。左の2本の電球は私たちにも馴染みの深いEベースの電球とわかりますが、右側の2本はどうでしょう? Eベースのようにスクリューになっていない上に、左右に小さな突起が2つ出ていることがわかります。これはスワンベースと呼ばれるもので、そう先ほどご紹介したジョセフ・スワンさんの名を関したモデルということになります。このモデルは耐震性を要求される場所に使われていたり、またスワンさんの活躍していた英国や英国系の歴史を持つ国などでは普通の電球にもスワンベースの電球を用いられていたことから、いまも古い家ではこの形が見られるところもあるようです。しかし、LED電球の形からもわかるように、現在広く普及しているのはEベースです。
後世に残るフォーマット
この結果を見ると、やはり電球の発明と言えばエジソンさんに軍配!と言わざるをえないでしょう。何よりも電球ソケットにしっかりと固定できて、取り替えも簡単という利便性があります。エジソンの偉大さは実は白熱電球の普及というよりもEベースの普及ではないかとさえ思えてきます。実際、Eベースの口金はかなり様々なサイズで展開されています。ちなみに日本で普及したシリカランプの口金はE26なのですが、このEの後に続く数字は、口金の直径を意味します。他にミニクリプトンランプはE17、ミシンの中に入っている電球は、E12、100ボルトのハロゲン電球はE11などとなっています。
この口金の“規格”を他のジャンルたとえば、パソコンに周辺機器をつなぐ差し込み口にたとえてみましょう。過去数々の周囲があったものが、現在はUSBが主流になってきています。そして、最近はパソコンをこえてスマートフォンの充電器などでもUSBが採用されています。このように規格が統一されることで、その商品が世界中で普及する礎となるのでしょう。
しかし、USBの歴史が20年程度であるのに比べると、Eベースの普及は130年以上となっています。いったい世界で幾つのEベースを受けるソケットがあるのか・・・?想像もつきませんが、これほど長い年月にわたり世界中に普及したフォーマットであることは、まちがいありません。まさか、エジソンさんも白熱電球自体がなくなって、まさか自分の名前を冠した口金だけが残るとは思いもよらなかったかもしれませんね。しかしながら、このEベース口金というフォーマットはLEDになってもなお、まだ現役で活躍しております。そして、そんなEベースを発明したトーマス・エジソンの偉大なる功績を改めて感じる照明関係者の私なのです。
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