投稿日:2016,05,27
photo by LIGHTDESIGN INC.
2年に一度の照明の祭典
今年2016年は世界の照明関係者が大変楽しみにしている催し、国際照明・建築技術専門見本市「Light+Building(ライトアンドビルディング)2016 」の開催年でした。この見本市はドイツ・フランクフルトが市を上げて盛り上がるという、2年ごとに開催される非常に大きな見本市です。最近ではフランクフルト市内だけではなく隣接する都市にも拡大した「Luminale(ルミナーレ)」という仮設の照明インスタレーションも同時に行われるため、夜になっても街は人で溢れかえっている状態です。
まさにこの期間は世界中から照明関係者が集まり、フランクフルト市付近は、お祭りのような様相を呈しているのです。光のソムリエでは2年前、そして4年前の開催の模様をお伝えしておりますが、今年ももちろん世界の照明動向調査に行ってまいりましたので、今回はその様子をリポートしたいと思います。キーワードは、“LEDファースト”!?
LED化がようやく定着
Light+Building 会場のメッセ正面にて
photo by LIGHTDESIGN INC.
さて、今年のライトアンドビルディングですが、英語の開催概要によると、「digital –individual- networked」というテーマで生活の質を拡げてくれるスマートシステムとモダンデザインに焦点をあてた展示ということになっており、日本語の開催概要にも「LEDテクノロジーから、太陽光発電や電気流動性、スマートメーターやスマートグリッド(次世代送電網)を用いたインテリジェント電気使用に至るまで、全てを網羅しています。」と記載されています。
つまり、モノのインターネット化というIoTプロダクトが中心となっており、LED化が遅かったヨーロッパでも、ようやく今年は会場すべてがLEDになったという印象を受けました。4年前のブログでは、そのさらに前の2010年の開催時はLEDはまだ展示の半分くらいで、2012年はそれが85%くらいになったと記しております。そして前回2014年のときは“ほとんどLEDになった”と言うものの、まだサッカースタジアムや体育館のような大型の施設で使う強い光源はメタルハライドランプだったので、完全にLED化したとは言い切れませんでした。
しかし今年は、そういった光源もLEDに切り替わり、LED一色にようやくなったという印象でした。これまで、シャンデリアの電球はLED化できないだろう・・・?と考えていたヨーロッパ人も、今年はオスラム社が開発したLEDシャンデリア球(フィラメントにあたるところが小さな線状のLEDになっている)の登場で一気にシャンデリアもLED光源を採用していたのです。
新しい感覚を持つ経営者たちが台頭
この見本市は毎回、メジャーなメーカーのブースの場所が決まっているのですが、今年はいくつかのメーカーが長年陣取っていた場所を明け渡し、その代わりに若いメーカーがそこにブースを開くという事態が起きていました。
ヨーロッパの老舗といわれる照明メーカーは、白熱電球の良さや美学にこだわるばかりにLEDへの切り替えに時間がかかってしまったのでしょう。こういった傾向がここ数年モジモジと続いてきました。エネルギーの問題を重要視した日本ではとっくにLED一色となっていた4年前も、まだヨーロッパではLEDに移行しないメーカーも多くありました。
そんな保守的な人たちを後目に、この4年の間にグイグイと成長株へと昇ってきたのが、新しい感覚を持つ経営者たちが率いる小さな照明メーカーで、彼らは既存の売れ筋照明器具を持たないだけに、まるっきり新規にLEDを光源とした新しい商品をゼロから開発することができていたようです。それゆえ保守的な照明を発表してきたメーカーには出来ないような素早い開発で、これまでにない斬新な照明器具をたくさん生み出すことができたのでしょう。
ITの世界ではパソコン用の開発が従来型で、スマートフォンのようなモバイル開発に移行する傾向だったのが逆転して、そもそもモバイル開発から始めるという「モバイルファースト」とか、モバイルのみの開発をする「モバイルオンリー」という言葉があるそうですが、照明の世界ではまさに、LEDファースト、LEDオンリーと言えるでしょう。
そんな影響もあって、会場は、例えばすごく小さいLEDや、スリットから光が出るようなものなど、個性豊かなLEDの百花繚乱といった雰囲気でした。一気に飛躍したヨーロッパの照明開発のトレンドを感じワクワクさせられた今年のフランクフルトだったのです。
ルミナーレのインスタレーションの様子
photo by LIGHTDESIGN INC.
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