投稿日:2017,02,23
photo by LIGHTDESIGN INC.
熟成を確かめる・・・
ワインの世界では、特殊なツールを使って、数年後の熟成した状態を確かめることができるのだそうです。それはクレ・デュ・ヴァンという道具で、見た目は単なる金属のプレート棒なのですが、ワインにこの棒を1秒浸すと1年後の熟成を確かめることができる、魔法のようなものなのです。これは、あくまでワインのソムリエ用に開発された測定器具で、ワインそのものの熟成を促すものではありません・・・。
さて、では光のソムリエの場合はと言いますと、偶然にもここ数年でやはり非常に便利な魔法のようなツールが登場しているのです。
光の何を測定するか?
そのツールとは写真に写っているものです。その姿を見て「なーんだ照度計か。」と思うかもしれませんが、それはちょっと残念です。これは分光照度計というもので、私は2年ほど前に購入したものです。形は従来の照度計と類似しています。上部の白い半球体で受けた光を測定することに変わりはありません。しかし、照度計は光の明るい暗いは測れても、光の色味までは測れません。
これまで色味を測る機器は色温度計(色彩色差計)といって、何ケルビンという単位で光が青みがかっているのか、赤みがかっているのかを示すものがありました。
じゃあ、色温度計と照度計があれば良いじゃないかというと、そうでもないのです。たとえば、色温度が3000K(ケルビン)は、電球色という色味を指しているのですが、一口に3000Kの電球色といっても明らかに異なる色味のものがあって、その違いを識別することまでは、できなかったのです。3000K電球色という表記は、その光に含まれる様々なスペクトルの平均値みたいなものなので、その組成までは言及することができませんでした。
分光照度計のスゴいところ
分光照度計のモニター
photo by LIGHTDESIGN INC.
ここまで書けば、もう理解ができたかと思います。そうです、分光照度計のすごいところは、照度や色温度だけではなく、その光を構成するスペクトル分布グラフとしてモニターに表示されるところです。
また、特殊演色評価といって決められた15色の色をどれだけ正しく見せることができるのか?といった評価値を表示することができるのです。たとえば、LEDの白色光には不得手とされる赤色(試験体番号9番)の評価がいくつなのか? あるいは日本人の肌色(試験体番号13番)が高いのか低いのか・・・?などが瞬時にわかるのです。これはLED時代の照明にとってもはや不可欠の道具となっているのです。
実は分光照度計というのは以前からあったにはあったのですが、とても大きく、しかもかなり高価で大きな照明会社の研究所ぐらいにしか装備されていなかったのですが、小さくて手ごろな価格のものが登場したところを、いち早くLIGHTDESIGNでも購入して使うようになったのです。
スペクトルデザインの必要性
光の色味は私たちの身近なところでも様々な形で調整され、見た目の演出が施されています。最も身近なのが、スーパーマーケットの生鮮商品コーナーです。
お刺身やお肉などの赤味をより美味しそうに見せるために、照明に工夫が凝らされているのです。そしてそれは古くから、ネオジウムランプや生鮮食料品用蛍光ランプといった特殊演色効果を発する光源によって演出されていたのです。それが最近ではそのような効果を持つ特殊なLEDにとってかわり、今日では、スペクトルの構成をデザインして、目的に応じた照明をつくろうとする動きが出てきました。
光源のスペクトルが目的ごとに調整されていく中で、光を扱うプロにとっては、光源の特性を確かめることは不可欠なことになっていくでしょう。
適光を適所に設えていくとは、ワインの飲み頃を見極め、ふさわしい場に振る舞うことと共通するところがあるかもしれませんね。
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