投稿日:2017,04,13
photo by Tim Norris
2020年には・・・
今、世の中で最も注目されるビジネスはロボット開発だそうです。3年後の2020年には10世帯に一世帯の割合で家庭にコンパニオンロボットが普及するとも言われています。ここで言うロボット・・・それは工場にあって商品を作るような産業ロボットではなく、公共空間や家庭にいて人間の身の回りをサポートする、ソーシャルロボットと呼ばれるものなのです。これに該当する周知のものは、床を掃除するロボットやご高齢の方々に会話を返してくれるコミュニケーションロボットなどがあります。また最新のものでは、家庭の様々な電気機器をコントロールしてくれるホームアシスタントロボットが開発されています。
照明も電気機器なので、人に代わってロボットが明かりをコントロールしてくれることになりそうですが、光のソムリエとしては、それが単に便利なだけでなく、人がとても気持ちよくなるような結果を導いてくれることを大いに期待したいと思います。今回は、未来の“照明ロボット”の姿を思い描いて、彼らにどんなことを託したいかを考えてみたいと思います。
執事型照らすロボット
照明ロボット イメージ図・しょうじひろやす
まず考えてみたのは、“照明機器もコントロール出来るホームロボット”ではなく、ロボット自体が照明で人に寄り添ってくれる存在イメージです。それはフワフワと人間の周り移動できるようなもので、多方向に伸びる吸盤型の照明アームが沢山ついています。(図参照)
普段はこのアームは閉じていますが、例えば、夜に人が家に帰ってきて玄関のドアノブに手をかけると、すぐさま人の帰宅を感知してドアを開けたと同時に、すーーっと足元を照らしてくれる・・・、その後さらにフワッと行先を照らしていく・・・、そんな照明ロボットの光サービスなのです。これが一人に一台ついて来て、外出の時にも夜道を照らしてくれたりするわけです。もちろん不要な時には非常にコンパクトになっている・・・
と、ここまで書いてふと思い起こすのが、江戸の時代に東海道を旅する人々が一夜の宿を借りる時のあかりのサービスのことです。
当時、旅人が宿に到着するひとつ手渡された行燈があったと聞きました。その行燈を布団のそばに置いたり、あるいは板の間で酒を酌み交わす折には、それを座した横に掛けるなどしたというのです。人に寄り添い人が集まれば明かりも増幅する・・・、そんな光景を想像するのです。この行燈がそのままロボットになったイメージでしょうか。一人に一台となると、それぞれの人の動きや思いをくみ取りながら、明かりを提供していくことを想定したのですが、この先の展開を考えようとすると、人とロボットとの基本的な関係を整理する必要があると感じました。
照明ロボットの原則
そういえば、アイザック・アシモフというアメリカのSF小説家は、著作「われはロボット(I, Robot )」の中でロボット三原則というものを示していました。それは、(1)人間に危害を加えない、(2)人間の命令に従わなくてはならない、(3)ロボットは自らの存在を護らなくてはならない、といったものです。これを参考にして照明ロボットで考えると、次なる3つの原則が思い浮かびました。
まず1番目は“人に危害を加えない”、例えば、不要なまぶしさ、不快な明るさを与えたりしないこと。2番目は“人間の命令に従わなくてはならない”、命令は人の無意識の段階で認識し、絶妙なタイミングで照明を点けたり消したりすること。3番目は“ロボットは自らの存在を譲らなくてはならない”、必要なときに現れて、不要なときには小さくなって姿を消すこと。
ただ便利に人の手を煩わせないことを期待するのではなく、照明がソーシャルロボットになる時は、人の心を汲めるものになりうる時だと考えます。
センサーでは出来ないこと
前回このブログのテーマにした照明センサースイッチなどはこういったロボットへの手前のステップかもしれません。スイッチをただ押したりするのではなく、そこにある何らかの状況を読み取って明かりを提供するという意味では、センサーというのはロボット化する第一歩なのですが、今そこに足りないのは、人の動きは読み取るけど、心を読みとってはいないということなのです。
例えば、今日はなんだかすごく酔っぱらって帰って来たとか、ツライ気持ちで帰ってきたとかいう心の状況によって、明かりを微かにつける・・・などという芸当は、さすがに今のセンサー技術ではできません。しかし、心の状態を脳波や心電図、発汗状態などのデータを収集することによって、近い将来には可能となるかもしれません。
一人に一台の照明ロボットが側にいてくれることで、快適な明るさを提供するというだけでなく、一緒にいるだけでなんだか落ち着くといった、トモダチのような照明ロボットが誕生すれば、ドラえもんの登場も、そう遠くないかもしれませんね。
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